中国のロボットメーカーUnitree Roboticsが、ヒューマノイドロボットを所有するという体験を、SFの夢物語から「衝動買い」の対象へと変えようとしている。同社は来週、Alibabaのグローバルマーケットプレイス「AliExpress」にて、新型ヒューマノイドロボット**「R1」を発売する。驚くべきはその価格だ。スターティングプライスは、わずか4,900ドル(約75万円)**。北米、欧州、日本、そしてシンガポールを含む主要市場での国際デビューは、安価で側転までこなすロボットが、文字通り世界中の玄関先に届けられる時代の幕開けを意味している。
「スポーツのために生まれた(Born for sport)」と銘打たれたR1は、身長123cm、重量は約25〜29kg。坂道を駆け下り、鮮やかな側転を披露するなど、極めて高い身体能力を誇る。Unitreeにとって手頃な価格帯のヒューマノイドはこれが初めてではない。先日発表され話題を呼んだ、より高性能だが高価な Unitree G1が1万6千ドルで登場、ロボット市場に激震 に続く戦略的モデルだ。1万6,000ドルという価格設定の上位モデルに対し、R1はその数分の一のコストで、これまで予算的に手が出せなかった研究者やデベロッパー、そしてホビーユーザーという新たな層を明確にターゲットに据えている。
ベースモデルとなる「R1 AIR」は4,900ドルから、より高度な機能を備えた標準モデルの「R1」は5,900ドルで展開される。この価格で、20〜26の自由度、8コアCPU、音声および画像処理用のマルチモーダルAI、そしてホットスワップ対応バッテリーによる約1時間の稼働時間が手に入る。スペックシートを見る限り、これは重工業向けの力仕事ではなく、あくまで「アクセシビリティ(手の届きやすさ)」を最優先に設計されたマシンであることがわかる。
なぜこれが重要なのか?
今回のローンチは、単に「安いロボットが出た」という話にとどまらない。これは世界のロボティクス・レースにおける、極めて強力な戦略的爆弾だ。米国では30万ドル(約4,500万円)以上することも珍しくないヒューマノイドというハードウェアを、AliExpressのようなマス向けのプラットフォームで販売することで、Unitreeは技術の「民主化」を一気に加速させようとしている。これを支えているのが、中国の高度にローカライズされたサプライチェーンだ。欧米の競合他社が逆立ちしても太刀打ちできないアグレッシブな価格設定は、この基盤があってこそ実現した。
数字がその勢いを物語っている。2025年、Unitreeはすでに5,500台以上のヒューマノイド(その多くは大学や研究機関向け)を出荷した。対するTeslaやFigure AIといった競合勢の出荷数は、それぞれ150台程度に留まっている。R1をグローバルなECサイトに載せることで、Unitreeは単に製品を売るだけでなく、ライバルたちがまだ研究所で試行錯誤している間に、世界規模の巨大な開発者エコシステムを自社プラットフォーム上に構築しようとしているのだ。「通販で買えるヒューマノイド」の時代は、今、決定的な一歩を踏み出した。

