筋肉のようにロボットを「編む」:ハンガリー発Allonicが720万ドルの調達で挑む製造革命

AIブームの喧騒の中、デジタルな「知能」が驚異的なスピードで誕生している一方で、ある不都合な真実がロボット革命の足を引っ張っている。それは、「ハードウェアを作るのがあまりにも面倒」だということだ。ソフトウェアが世界を飲み込もうとしている一方で、ロボットのハードウェア製造はいまだに19世紀さながらの、気の遠くなるような手作業による組み立てというパラダイムから抜け出せずにいる。

ブダペストを拠点とするスタートアップ、Allonicはこの現状を「不条理」だと断じ、それを証明するために720万ドル(約11億円)のプレシード資金を調達した。これは単なる資金調達ではない。ハンガリー史上最大規模のプレシードラウンドであり、その狙いは、業界で最も退屈で、かつ最も重要かもしれない「ボトルネック」の解消にある。

問題の本質は、その複雑さにある。人間の器用さを模倣した高度なロボットハンドは、無数の小さなネジ、ベアリング、ケーブル、そして繊細な関節が絡み合う悪夢のような構造をしており、それらはすべて一つひとつ手作業で組み立てられている。その結果、製品は高価で壊れやすく、生産や試作のイテレーション(反復)は信じられないほど遅くなる。Allonicの創業者であるBenedek Tasi、Dávid Pelyva、David Hollóの3人は、ブダペストの大学でバイオミメティック(生体模倣)ハンドの研究をしていた際、このフラストレーションを身をもって経験した。「何百もの小さな部品を組み立てるのに何週間も費やし……古い製造手法のせいで身動きが取れなくなっていました」とTasiは振り返る。「その時、本当の問題は設計(デザイン)ではなく、作り方にあるのだと気づいたのです」

「3Dティッシュ・ブレイディング」が織りなす未来

Allonicが提示する解決策は、まるでSF映画の一場面のようだ。彼らはそれを「3D Tissue Braiding(3D組織編組)」と呼んでいる。組立ラインのことは忘れてほしい。これは、ハイテクな織機がロボットの肢体を「織り上げていく」ようなプロセスだ。システムはシンプルな骨格フレームから始まり、その周囲に高強度繊維、弾性体、腱、さらにはセンサーの配線までもが、一つの連続した自動プロセスによって編み込まれていく。その結果、強靭で柔軟、かつアクチュエータを接続するだけですぐに動かせる、モノリシック(一体成型)なロボットパーツが誕生する。

「ベアリングやネジ、ケーブルといった何百もの個別の部品を組み立てる代わりに、骨格となるコアの上に腱や関節、荷重を支える組織を直接形成しているのです」と、CEOのBenedek Tasiは説明する。

このアプローチは、製造サプライチェーン全体を劇的に短縮する。CADデータから、実際に機能するプロトタイプが完成するまでの時間は、数週間からわずか数分、あるいは数時間へと短縮される。Allonicによれば、同社の第2世代の製造装置は、すでに前世代機に比べて5倍速く、サイズは半分にまで小型化されているという。ハードウェアの改良に多大なコストと時間を要するこの業界において、これは極めて画期的な進歩だ。

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ニッチな研究所から「インフラ・プレイヤー」へ

今回の720万ドルのラウンドは、Visionaries Clubが主導し、Day One Capitalのほか、OpenAIHugging FaceといったAI大手のエンジェル投資家たちも名を連ねている。これは、どれほど優れたAIが登場しても、ハードウェアが進化しなければ、その「知能」は不器用で実用性の乏しい体に閉じ込められたままになる、という危機感の裏返しでもある。「ハードウェアは依然としてロボット工学における最大のボトルネックの一つです」と、Visionaries Clubのパートナー、Marton Sarkadi Nagyは語る。「ハードウェアが適切でなければ、我々が目指す未来には到達できません」

Allonicは、自ら第2のAtlasやOptimusを作ろうとしているわけではない。むしろ、ロボット産業全体の製造基盤を支える「インフラ・プレイヤー」を目指している。そのビジネスモデルは、顧客がAllonicのプラットフォーム上でカスタムロボットのボディを設計し、同社がそれを製造・納品するというものだ。彼らはすでにエレクトロニクス製造分野でのパイロットプロジェクトを完了している。この分野では、単純なグリッパーよりも器用で、かつフルサイズのヒューマノイドよりも低コストなマニピュレーターが切実に求められている。

また、野心的なプロジェクトのスケールアップには製造プロセスの革新が不可欠であることを理解しているヒューマノイド開発企業やビッグテックからも、同社には熱烈な視線が注がれている。

「組み立て」の時代の終焉か?

もちろん、記録的なプレシード資金と鮮やかなデモだけで革命が起きるわけではない。独自の製造プロセスが世界の業界標準となるまでの道のりは長く、険しい。Allonicは、この「織られた」肢体が産業用途の過酷な環境に耐えうるのか、従来の機械加工部品と同等の精度を維持できるのか、そして大規模生産において経済的に見合うコストを実現できるのかを証明しなければならない。

それでも、このコンセプトが抗いがたい魅力を放っていることは間違いない。ロボット工学において最も地味だが最も根本的な問題に真っ向から挑むことで、Allonicは大胆なメッセージを発信している。世界が「機械の中の幽霊(AI)」に目を奪われている間に、このハンガリーのスタートアップは静かに「機械そのもの」を再設計しているのだ。もし彼らが成功すれば、未来のロボットはドライバーで組み立てられるものではなく、織機で織りなされるものになるだろう。